新作の先達

手に取るか取らないか微妙なラインのものを取り上げてくブログにしたい。

台風家族〜無理矢理陽の目を見なくても

芸術の秋ですがいかがお過ごしでしょうか、ベッティです。田舎だと芸術を嗜むのも一苦労なので車が欲しいです。あとお金と広い部屋。

 

台風家族⭐︎〜邦画らしさが全面に押し出されてて辛い。せめて舞台で

 

数年ぶりに集まった家族がどったんばったん大騒ぎするお話

 

100万円束を10個カルトンに載せて恐る恐る運ぶ店長と付き添いの窓口女性、窓口には紙袋を被り息を荒くした男性が人質の女性に包丁を突きつけながらお金を要求している。俯せにさせられている大勢のお客を尻目にお金を奪い銀行を飛び出す紙袋男、老婆を助手席に乗せた霊柩車でにげ出し、観客に男性が2千万円を強盗した事が告げられます。

包丁を持った強盗1人対大勢の成人男性で誰も抵抗を試みなかったのか?人質を抱えた男がどうやって剥き身の札束を受け取ったのか?差し出された現金と被害総額が違うと開幕早々台風前夜のような不安感を視聴者に突きつけます。

 

公式のあらすじだとサスペンス風にも読めますが、話の筋はヒューマンドラマ。序盤嫌なキャラだった主要人物が実はみんないい人だった、という日本人の大好きなテイストの話です。

あと、合間合間で空気を和ますためか、日本人好みの馬鹿騒ぎ系の笑いを合間合間に突っ込んでくるし、演出で滑ってるしで個人的には見ていて疲れました。

特別な理由もなく観客が好きそうなシーンを入れる為に色々と回りくどいシーンを入れてテンポが悪くなってるのもだるい。シリアスな伏線は秒で下らない感じに回収し、メインの伏線は妄想力が豊かじゃないと分かりません。

出演者の都合で一度お蔵入りしたけど、3週間限定で公開するよ!とのことらしいですが、正直観に行かなくてもいいと思います。場面転換、登場人物共に少なく、仲違いしていた兄弟が今回の事件を契機に仲良くなるというアットホームなオチなので、脚本直して舞台化したら良かったのにという感じでした。

 

それではみなさん、良い家族団欒を

 

以下、ネタバレ

それでも観たいって方は見ないで下さい

観に行く気をなくします。

 

まずは核心から

 

妻が認知症になり介護疲れをしていた父は、長男が交通事故を起こし2千万円を支払う必要があるとの電話を受ける。家を飛び出し永く会ってない長男が最近免許を取った事を知っていた父はその電話を信じ、銀行強盗でお金を調達する決意をした。

この話を、父に嘘電話詐欺した女性から謝罪に来た事で真相が判明。泣きながら父に直接謝りたいとか言い始める女性をみんなが受け入れ、両親を探しに台風の中家を飛び出す。

なんで許した、と思うかもしれませんが、その女性も訳ありでした。なんと、学費と母の介護費を稼ぐ為に知らずに応募したバイトがたまたま嘘電話詐欺の事務所だったのです。そして詐欺をした後恐ろしくてバイトは辞めたけど、上司から脅されて10自首ができなかったのです。10年間間罪悪感にさいなやまれていた彼女を許して下さい、僕は同じシチュエーションだったら許さないと思います。

 

この映画、序盤に登場人物を下げて、最後に実は訳があったから許してあげてね、という構図で観客の同情を誘ってくる日本人が好きな展開で、8日目の蝉に号泣しちゃう僕でも冷めちゃう位に行動が下らない。

長男が金に汚いのは、娘をウィーンにピアノ留学させるためだという話を妻が娘にしている時、当の長男は雨宿りしている神社の賽銭箱の横に落ちている小銭を必死に拾っている。

次男が早く帰りたがっている理由が葬式の最中に子供が生まれたからで、それをカミングアウトするのが、ラストに海で叫ぶシーンでそれまで子供どころか妻の話すら無い状態からだったりと、見せたいシーンを詰め込んで訳わからない感じに仕上がってます。

あと、途中で刃物を振り回すシーンがあり、その際に外に投げ捨てられた包丁が、(わざわざ前のシーンで外に投げ捨てられたコルセットの横に落ちる)長男が外に出た時に消えている(しかしコルセットは落ちたまま)という凡ミスや冒頭の金額相違と言ったところは、公開を3ヶ月延期している間に修正出来ないものなのでしょうか。変なところで伏線を張るから、ミスも伏線かと勘ぐってしまう。

ネタ映画としては一級品なので、酒飲みながらDVDで観ると楽しいかもしれないです。